■逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録:市橋達也著
イギリス人英語講師を殺し、逃走していたとされる男の手記が出版され、その2年7ヶ月
の足跡を回想し、挿画まで添付されて出版されている。三省堂で平積みされていたので、
買ってしまう。ちなみに、1日で読み終える内容だ。
基本的にどこに、どのような手段で逃げ回っていたのか?ここが中心にある。北は
青森から、南は沖縄まで日本列島を縦に移動し続けても、バレないのも凄いが、
基本的に関西で土建のバイトをし、沖縄の離島との往復をして生活をしていたという、
そのスタイルに驚く。逃走したらマンションに隠れて、人目に付かないように篭城する
勝手なイメージもあるが、平気でJRや高速バス、フェリーに乗車して、まったく平気だ
ったというぐらい、無関心なんだなあ~なども思う。
さて、本書から伺えるのは、バランスの悪さだ。大胆で緻密な逃走劇と、ドジで短絡的
な発想、さらに身体に対する鈍感さを感じる。つまり、自分の肉体容姿に対しても、
ハサミやナイフで自分自身の特徴を消す行為を平気でする。整形手術のために
バイトで稼いだ金をつぎ込む。残飯漁りや、野生の蛇を食い、ヤギまで殺して食いたい
と表現される飢えに対する意識。
どれもバランスが欠けている。逃げる目的が、さらしもののされる!と何度か登場す
るが、逮捕されてさらし者にされたくない!でも、死ねない。殺人をするまで、就労した
ことがなく、医者の親からの仕送りのみで気ままに暮らせた。そのような環境が当たり
前にあれば、就労などしないのだろう。
逃走劇でありつつ、平成プロレタリアエセ文学的でもある。手記としては、話にならない
ぐらい駄目で幼稚な文章であるが、あいりん地区や西成の労働環境など、就労と
現在の下層生活の実態についての報告書として眺めると、少し色合いも変わる。
仕事を選ばなければ、住所不定でも偽名でも、殺人逃走容疑者でも、仕事が出来る
この国は豊かなのだと感じる。新卒大学生は、就職できないのではなく、しないだけ、
それが良くわかる。仕事がありすぎて、選べないのだ。30歳まで遊んでいる。
働かない。外人の女性を殺し、一体どんな行為をしたのか?どんな、どんな、、、、
つまりゲスなエロスに還元可能なネタの提供者である、著者の一面的な記述で
あって、本当に知りたいことは、全く書かれていないので、立ち読みでスルーしても
充分な感じです。
*はっきり言えば、つまらないです。
ルネ
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